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ギリシャ神話

†英雄テセウスの伝説†
・・・テセウス誕生・・・

アテナイ隣国メガラに亡命したパンディオンの死後、息子4人はメティオンの息子達一族を追い払うべくアテナイに進出。 統治権を奪回した後、彼らは国を4分割してそれぞれ治めることにした。全権力はアイゲウスが保持することになった。
彼はホプレスの娘メタレクセノルの娘カルキオペを娶ったのだが、 全く子供に恵まれなかった。相続争いを恐れたアイゲウスはデルポイで信託を求めることに。
「アテナイの故郷にたどり着くまでは、決して酒袋の口を開けてはなりません。」
「なんですか、それは?(゚Д゚)ポカーン」
「さあ?ご自分で考えなされ。」
アイゲウスは意味がよくわからなかったが、とりあえずデルポイをあとにする。帰路途中少し回り道をして(というか、もはや反対方向。)、 アテナイと湾を挟んで反対側のトロイゼンに立ち寄った。トロイゼン王はピッテウスといいペロプスの子という説がある。 アイゲウスは彼の屋敷でしばらく厄介になることにした。
「どこから帰る途中だったんだい?」
「デルポイで信託を受けた帰りだったんだ。ちょっと遠回りしてトロイゼンまでやってきたんだ。」
「ほう、何の信託を得たんだ?」
「どうしたら子供ができるか、ってことなんだが・・・。信託は家に就くまで酒袋の口を開けてはいけないだと。まったく意味がわからないんだ。」
これを聞いたピッテウスは瞬時に信託の意味を悟る。ようするに他国で酔っ払って女を抱くと子供ができてしまうのだと解釈したのだ。 ピッテウスアイゲウスを困らせようとしたのか、それとも彼に子供を授けてやろうと思ったのか ガンガン酒を飲ませて泥酔したアイゲウスを寝室に放り込んだ。そして自分の娘アイトラを夜伽に行かせたのだ。 どうやら同じ夜にポセイドンも寝室にやってきたとか。仲良く3P・・・てことではなく、 テセウスポセイドンの子だという説から無理やりこじつけた話ではないでしょうか。 とにかくアイトラは見事アイゲウスの子供を身ごもった。 アイトラが懐妊したとわかるまで滞在していたということは、1ヶ月以上トロイゼンで足を止めていたことになる。長いホームステイです。
「エラい場所で子供を作ってしもた・・・。」
帰国時にアイゲウスアイトラに言伝る。
「もし男の子が産まれたら私の素性を決して教えてはいけない。命を狙われる恐れがあるからね。私はあそこの巨岩の下に剣とサンダルを隠しておく。 あの岩をどかせて剣とサンダルを取り出すことができるようになれば立派な青年だ。その時に私の名前を教えるがいい。そして証拠品を持たせてアテナイに来るように言ってくれ。」
そしてアイゲウスは自国アテナイに戻っていったのだ。そして月満ちて生まれたのがテセウスである。

さてテセウスがトロイゼンで健やかに成長している間、アテナイでは事件が起きていた。 アイゲウスはいつものパンアテナイア祭を行い、 その競技で総優勝を果たしたのがちょうどアテナイに滞在していたミノスの息子アンドロゲオスである。 しかし彼はこの地で変死を遂げるのだ。一説ではアイゲウスにマラトンの牡牛退治を頼まれて逆に殺されてしまったとか、 あるいはテーバイのライオス王の葬儀競技会に向かう途中で彼の運動能力に嫉妬する何者かに暗殺されるのだとか言われている。 とにかくそれを聞いたクレタ島王ミノスは激怒して(後者の場合はアテナイは関係ないと思うのだが。)アテナイを逆恨みして大艦隊で攻め寄せるのだ。 ちなみにミノスが息子の死の報告を受けたとき、ちょうどパロスの地でカリテスたちに生贄を捧げている最中だった。 彼はあまりの憤怒に冠を投げつけて笛の音を止めてしまった。そして儀式はそのまま終わらせてしまったのだ。 それ以来パロスの地ではカリテスへの儀式のときは冠をかぶらず笛も吹かないのだとか。
ミノスはなかなかアテナイを落とすことができず、 まずアイゲウスの兄弟ニソスが統治するメガラの地に目をつけた。しかしここも防御が堅い。 この戦でニソスを援助したオンケストス人ヒッポメネスの子メガレウスが殺される。 ニソスには1人娘スキュラがいたのだが、彼女は敵国の王ミノスに一目ぼれ。 恋とは自国や親をも裏切るもので、ミノスに父親の弱点を教えてしまうのだ。 実はニソスは紫色をした髪の毛が頭の真ん中に1房生えている。まあイメージとしては昔の関口宏みたいなもんでしょう。 これを切り取ると死んでしまうのだ。スキュラは父が寝ている隙に髪の毛を切り殺してミノスの元に逃げ込む。 大将を失った国は落ちるのも早い。メガラの地はミノスにより落城してしまう。 そして用済みのスキュラを船の先端に逆さ吊りにして、溺死させてしまったのだ。 なんでこんなに極悪非道なミノス王が黄泉の国の3法官に選ばれるのだ? まあ救いの説としてオウィディウスの話には続きがある。スキュラに羽が生えてケイリスという鳥に変身するのだ。 しかし海鷲(ハリアエトス)に変身した父ニソスは、絶えず彼女を引き裂こうと追い回しているのだ。あまり救われていないかも。
結局戦争は長引き、なかなかアテナイを落とすことができないミノスゼウスに祈る。 するとアテナイに飢饉と疫病がはやり、アテナイ側もすぐに信託を求めた。
「ラケダイモンの地からアテナイに移ってきたヒュアキントスの4人娘アンテイスアイグレイスリュタイアオルタイアを神に捧げなさい。」
彼女たちはキュクロプスのゲライストスの墓の前で生贄として殺されてしまうのだが、なんの効果も得ることができなかった。 全く殺され損である。懲りずに信託を求めるアテナイ人に対して、神の返事はつれないものだった。
「お前達はクレタ島ミノスに勝つことはできない。出来ることは、彼に降伏することだけだ。」
早速クレタ島に使者を遣わして和解を求めたが、彼らはラビュリントスの迷宮に放り込まれてミノタウロスの餌食になったとか迷宮内で迷って餓死してしまったとか言われている。 ミノスの要求はますますエスカレート。
「7人ずつの武器を持たない少年少女をミノタウロスの餌食に送れ。」(人数は伝承によりまちまちである。)
こうしてアテナイはクレタ島に負け、テセウスがアテナイにやってくるまで屈辱の日々を送ることになったのだった。 ミノタウロスやラビュリントスの迷宮については職人ダイダロスの章で詳しく書いてあります。