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ギリシャ神話

†オリュンポス神々の伝説†
・・・神々の刑罰・・・

アテナ編

ケクロプスの娘たちアラクネ

<ケクロプスの娘たち>
ある日アテナは武器を作ってもらいにヘパイストスの元へ訪れた。 ところがヘパイストスアフロディテに棄てられて(´・ω・`)ショボーンだったのだが
「・・・こいつでいいや。」
とばかりにアテナに対して欲情を抱く。そして片足をひきずりながらアテナに飛びついた。 しかし彼女は処女を守る女だ。嫌がる女、それも武術に長けた女を寝取るなんて出来るはずもなく、我慢できなかったヘパイストスアテナの足の上で果ててしまった。

「何しやがるんじゃ、このヴォケがぁ!!」

怒ったアテナ様は足にかかった精液を毛(なんの毛だ?)でふき取り、地面に投げ捨てた。 そこから生まれたのが、後のアテナイ王エリクトニオスである。
その後ヘパイストスアテナ様にどんな仕打ちをされたのかはしらないが、とりあえず彼女は生まれた子供を 育てることにした。と言ってもアテナ様は忙しいから、育児はもっぱら他人に任す。 エリクトニオスを箱に入れてケクロプスの娘 「輝かしい微風」アグラウロス「露」ヘルセ「すべての潤い」パンドロソスの3姉妹に預けた。 そして箱を開けることを禁じた。どうやって育てるんだろうと思いますが、何もせんでいいらしい。
でも見るなと言われると見てしまうのが人間というもの。好奇心に勝てなかった3姉妹は箱を開けて見てしまう。 なんとその中にはエリクトニオスを取り巻いた大蛇がいたのだ。またはエリクトニオス自身の足が大蛇になっていたのだ。 そしてこの3姉妹はその大蛇によって殺されてしまう。あるいはアテナ様のお怒りに触れて気が狂いアクロポリスより投身自殺したという。
結局アテナ様は自分で彼をアクロプロス山頂のエレクテイオンの地で育ててアテナイ王になりました。
エリクトニオスアテナが生んだ子ではなく、 クラナオスの娘アッティスヘパイストスとの間の子とも言われています。

<アラクネ>
小アジアの西海岸コロポンの町に身分の低い商人イドモンの娘アラクネが住んでいた。 彼女は織物が得意で、その腕前はあっという間に世界中に知れ渡った。 彼女の織物を見たものは「女神アテナ様がくださった能力だ。」と褒め称えたが、アラクネはその言葉にむっとした。
「私の腕前は私自身が努力して培ってきたもの。決して女神様のお力添えなど頂いてはおりません。」
皆にヨイショされると人間ってすぐ鼻ターカダカになっちゃうんです。そんな些細なことに目くじらを立てる女神アテナ様。 それぐらい多めに見てあげなよ。とも思うんですが、こういう輩を放っておくと後で取り返しのつかないことになっちゃう場合もあるので とりあえず老婆に化けて忠告に向かう。
「お前さんが自慢したがるのもわかるけどね、それは人間の間だけにしときなさいよ。間違っても女神様より腕が上だなんて言っちゃいけない。 いますぐ女神様に許しをこうた方が良いと思われ。」
するとアラクネ
「何よこのくそばばあ。女神が一体なんぼのもんよ。あんたの説教なんて聴きたくないわ。じゃあその女神をここに連れてこいっての。 いますぐ私と競って私の方が勝っていることを証明してやろうじゃない。」
とこんなに口が悪かったかどうかわからんが、そんな暴言を吐いてしまった。
(# `Д´) ムッキー!と頭に血が上る女神アテナ様。アラクネの前で本当の姿を表した。
アラクネガビ━━━━━━ΣΣ(゚Д゚;)━━━━━━ ン!!て感じだが、もう開き直るしかないですな。こんな時は。
そして織物大決戦の火蓋が切って落とされた。アテナ様はオリュンポスの優美・優雅・壮大な生活をきらびやかに風刺し、 一方アラクネゼウスの浮気シーンやアポロンの刑罰を受けているシーンなど、 神々の情けない姿を恨みこめつつ織り込んだ。
両者とも甲乙つけがたいほどの腕前であったが、この織物を見てアテナ様はご乱心。ぶなの木で彼女の頭を3度殴りつけた。 アラクネの行為は自分の自慢に留まらず、神を汚した行為としてアテナの個人的感情以上に神としてこの人間を許せなくなったのだろう。 アラクネもさすがに神に対する冒涜行為の罪悪感にさいなまれなくなり首を吊ってしまった。
アテナは哀れに思い、命だけは助けてやるが一生機を織る生物に変えるためヘカテの魔法の草の汁をかけた。 見る見るうちに彼女の体は小さな蜘蛛に変身していったのだった。アラクネとは蜘蛛という意味なのです。

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アポロン編

マルシュアスパンニオベ

<マルシュアス>
サテュロスの1人マルシュアスはある日アテナの捨てた縦笛をみつける。 アテナは吹くときの顔がみっともないので笛を捨ててしまったのだ。 マルシュアスは持って生まれた器用さで縦笛を上手に扱い見事な音色を奏でた。 ニンフたちが褒めたたえるので天狗になった彼は「おらあアポロンよりうまくふけるぞ。」なんて言うもんだからアポロンも黙っちゃいられない。
なんかアテナと似ている気もするがとにかく技比べ開始。神と技を競うなんてとんでもないことですが。 審査員はオリュンポスの神ともヘリコン山のニンフとも言われている。
まずアポロンは竪琴を奏でた。しかしアポロンは竪琴を逆さに持ちそれで演奏したのだから、 マルシュアスも笛を逆さに持って演奏しろとワケのわからない理屈でいどむ。 審査員はアポロンの勝利に同意するしかなかった。
罰としてマルシュアスは生きたまま皮をはがれ殺されるというなんとも屈辱的な罰を受けることに。 マルシュアスは泣いて乞うたが、聞き入れられなかったらしい。
その姿を見た森や川のニンフたちは涙を流し、その量が多すぎて川が出来た。 その川はマルシュアス河と呼ばれ流れる音は美しい音色を奏でるという。

<パン>
これもマルシュアスと似たような話だが、アルカディアに住む「家畜と牧人の神」パンは笛が得意で 自分の腕はアポロン以上だと吹聴してまわった。そしてまた技比べをすることになる。 審査員はリュディア地域のサルディスにそびえるトモロス山である。
プリュギア王のミダスはかねてからパンの崇拝者だった。 ちなみに彼は黄金事件以来もっぱら質素な生活を愛し、自然を親しんでいた。 そのためこの競技も心配のあまり出席したのだが、やはり彼はアポロンに敵う敵ではなかったのだ。
アポロンの圧勝に真っ向と立向かうミダス王。 アポロンはきちんと音を聞き分けることができるように、彼の耳を延ばし作り変えてやった。そう、ロバの耳をつけたのだ。 パンに対する罰はなかったようです。

<ニオベ>
タンタロスの娘ニオベアンピオンとの間にたくさんの子供をもうけた。 人数は定かではない。アポロドロスは7男7女、ヘシオドスは10男10女、ヘロドトスは2男3女、ホメロスは6男6女と言っている。 ご丁寧にアポロドロスは子供たちの名前まで列挙してくれている。一応書いておきましょう。息子シピュロスエウピニュトスイスメノスダマシクトンアゲノールパイディモスタンタロス。 娘エトダイア(またはネアイラ)クレオドクサアステュオケプティアペロピアアステュクラテイアオギュギア
ともかくニオベは子宝に恵まれたことが何よりも自慢で「私はレトよりも恵まれている。」とのたまった。 それを聞いたレトは憤り、アポロンアルテミスが子供達を虐殺した。
しかし奇跡的に助かった子供がいる。息子アンピオンと娘メリボイアである。 しかしこの説もまちまちで、テレシラ説だと助かったのはアミュクラスメリボイアである。 アンピオンアポロンに射られて殺されている。彼らの名前は上記に記されていない。 だから人数も諸説バラバラなのでしょう。
子供たちを失ったニオベは父タンタロスのいるシピュロスへ戻り、 ゼウスに祈って石に変えてもらった。またはさすがに哀れに思ったレトが変えてやったという。 その石は今も泣き続けて泉に流れているらしい。
ちなみに生き残ったメリボイアは、兄弟が殺されていくさまを見て顔面蒼白になってしまった。それから 「蒼白の女」クロリスと呼ばれるようになったそうだ。実際は疫病かなんかで子供たちが亡くなったのかもしれませんね。

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アフロディテ編

ヒッポリュトススミュルナダプニスプロテシラオスクレイオ

<ヒッポリュトス>
アテナイ王テセウスと第2夫人アンティオペ (とかメラニッペとかヒッポリュテの説もある)の息子ヒッポリュトスアルテミス女神を崇めて童貞を守り、女よりも狩を好んだ。 しかしテセウスの第3夫人パイドラがそんなヒッポリュトスに欲情してしまう。
「チェリーボーイ(*´е`)ヾカマーン」
もちろんアルテミス崇拝者の彼はそんな誘いに乗ってこない。そもそも自分の義母親に手を出すのはとんでもないことと彼女を拒絶するのだが、 パイドラとしては面目まるつぶれである。
こんな行為が夫テセウスに発覚したら大変、自分の命が危ない。彼女は身の保全に走った。 自分の着ている服をビリビリ引き裂いて、泣きながらテセウスに訴える。
「あなたぁ〜んヒッポリュトスが私の操を〜。・゚・(ノA`)・゚・。」
本気にした彼はヒッポリュトスに激怒する。そしてポセイドンヒッポリュトス 殺害を依頼する。身に覚えのない彼としては怒られる訳がわからず、怒りにまかせて海辺で馬車を走らせる。 その時ポセイドンが放った牡牛がヒッポリュトスめがけて駆けつけてきた。 おののいた馬が暴れだし、ヒッポリュトスは手綱にからまれて引きずられ瀕死の重傷を負ってしまう。
アルテミステセウスヒッポリュトスの無実を語るのだが、時すでに遅し。 悲しみにあけくれる一同をよそにヒッポリュトスは天昇するのだった。パイドラは自責の念から自殺してしまう。
この一連の事件の原因はアフロディテである。彼女はヒッポリュトスに言い寄るのだが、 アルテミスに身を捧げる彼がアフロディテになびくはずがない。プライドを傷つけられた彼女は、 パイドラによこしまな心を植えつけてしまうのだ。ホントにいらんことするエロ女神である。

<スミュルナ>
ある祭りの夜に、彫刻家ピュグマリオンの孫に当たるキュプロスの王キニュラスの元へ夜伽をしたいという女が現れた。 顔は一切見ないという約束で12夜共にしたが、どうしても顔が見たくなったキニュラスはとうとう燭台を手に女の顔を照らした。
「おまえは・・・!!」

キニュラスには1人の美しい娘スミュルナがいた。求婚者があとを絶たないが、彼女は一向に応じようとしない。 父はそんな娘を気遣い、好みの男性を問うがスミュルナはただ
「お父様のような人を。」
といい、涙をためるのだった。スミュルナは父に恋焦がれていたのだ。禁じられた恋の悩みに打ちひしがれ、 自分の罪の恐ろしさに彼女は首を吊って自殺を図ろうとする。偶然乳母の発見により一命は取り留め、乳母の優しい言葉にすべてを打ち明けてしまう。 そして乳母の計らいで12夜を父と共に過ごしたのだった。
娘の顔を見て愕然とする父親だが、タブーである近親相姦を犯した者を逃すわけにはいかず剣で彼女を切りつけた。 しかし娘であることに躊躇してしまい、その隙をみてスミュルナは逃げた。
彼女は9ヶ月の間国々を渡り歩いてついにアラビアの南サバの地に来た。もはや動くことの出来ない彼女は、神の慈悲により没薬の木になったのだった。 しかし臨月にはいっていた彼女の体は木になった後も、幹が異様に膨れ上がって苦しさに悶えていた。 急いでエイレイテュイアが分娩すると、中からかわいい子供が生まれた。それがアドニスである。
以上がオウィディウスの説で、他にも彼女の出生は諸説あってはっきりしていない。パニュアシス説ではアッシリア王テイアスの娘である。
なぜスミュルナは父に恋心を抱くようになったのか、それはアフロディテの怒りの刑罰のためだった。 彼女はアフロディテへの祭を怠ったために女神の逆鱗に触れ、父に対してこのような行為に及ぶよう罪をきせられたのだ。
ちなみに没薬というのは防腐剤に使われていたらしいです。

<ダプニス>
彼はヘルメスとシチリア島のニンフとの間に生まれた美しい青年だ。しかし彼は自分の美貌におごり高ぶり、思いをよせるニンフたちを 鼻であしらっていた。そんな態度がアフロディテの怒りに触れ、盲目にされてしまった。挙句の果てにアナポス河に身を投げて自殺した。
他説もあって、あるニンフと永遠の愛を誓いながら約束を破ったので盲目になったとか、メナルカスの愛人だったが あるニンフに想いが伝わらなく失望して崖から身を投げて死亡したとか。
彼は義兄弟のパンと仲がよく、彼からよく笛を教わっていた。そしてニンフだけでなく、野山の獣達にも慕われており 彼の臨終の際は、ニンフや獣やパンまでもが見とりに来たという。
ローマ時代の物語「ダフニスとクロエ」は、オリュンポス神は出てくるものの完全に別物語である。

<プロテシラオス>
プロテシラオスの妻はメレアグロスの娘ポリュドラ、 あるいはアカストスの娘ラオダメイアとも言われている。
なんにせよ結婚早々トロイア遠征に加わり、足の速いのが自慢の彼は我先にと砂浜に降り立った瞬間、槍に撃たれて死んでしまう。 実は最初にトロイアに上陸したものは死ぬと言う予言からなされたことである。ちなみに当てたのはトロイア王子ヘクトルアイネイアス、あるいはアカテスとも言われている。
プロテシラオスは結婚式の際、忙しさのあまりかアフロディテに感謝の供え物を捧げることをすっかり失念して、 そのまま帰らぬ人となってしまった。別にそのせいで彼が戦死したわけではない。アフロディテの呪いはもっと別のところにあった。
彼の死が故国に報ぜられたとき、妻ラオダメイアの父はやむを得ぬことと諦めて娘を再び他の男に嫁がせようとした。 しかしラオダメイアは断固としてこれを拒絶する。これこそがアフロディテの仕掛けた愛の呪い。 彼女は死んだ夫に激しい愛情を抱くように仕向けられたのだった。
ラオダメイアは夫の蝋人形を作り、毎日それに話しかけていた。 しかし毎晩彼女の部屋から話し声が聞こえることに不審に思った召使が、そっと彼女の部屋を覗いてみる。 すると、見知らぬ男の影が見えるではないか。それは夫プロテシラオスの姿をした蝋人形に他ならなかったが、 暗い部屋で垣間見た召使からすればラオダメイアが男と逢引しているように見えたのも無理はない。
当然その話は父アカストスの耳に入る。
「再婚を拒んでいる理由はそれだったのか!どこの馬の骨とも知れぬ男を部屋に連れ込みやがって。」
憤慨した父親は扉を蹴破って娘の部屋に乱入した。驚く娘。それにも増して驚いたのは父アカストス
「これは・・・。」
「私の夫プロテシラオスよ。私はこの人がいる限り、他の誰とも連れ添う気はないの。」
ラオダメイアは蝋人形を抱いて泣きながら自分の想いを訴えていた。その姿をみて父親はとまどう。
「とりあえずその人形を捨てなさい。」
「イヤよ、イヤ!絶対にイヤ!」

その頃、プロテシラオスは黄泉の国でやはりアフロディテの呪いにより熱い恋に身をよじっていた。 そして愛しい妻の下へ戻りたいとペルセポネに訴えた。情の厚い女王様のこと、一時だけ地上に戻ることを許してやった。
ヘルメスの案内により、イオルコス城の奥にあるラオダメイアの部屋に入る。 そこには夫の人形を抱いて眠っていたラオダメイアがいた。ふと気配に気づき、目が覚める彼女。なんと目の前に夫が立っている。
「生きていたのね。戦争から帰ってきたのね。これからずっと一緒にいられるのね。」
と凱旋帰国したものだと喜んだ。しかし時間とはつれないもので、あっという間にプロテシラオスが黄泉の国へ戻る時間がやってきた。 その時、ラオダメイアは初めて夫が死んだものだと気づく。ヘルメスに連れられて戻っていく夫を追いかけながら、 彼女にはもはや現実と幻想の区別ができなくなっていた。そして夫と共にありたいという願望から、躊躇せずに剣を自分の胸の奥深く突き刺すのだった。

<クレイオ>
クレイオは歴史が担当のミューズの1人である。 彼女はなぜだかアドニスに夢中になるアフロディテを非難したのだ。 (アドニスについては愛の神話の章で。)
「ちょっと、そんな少年好きになるなんてみっともないわよ。あんたショタコン?」
ムカっときたアフロディテは、彼女を人間の男に恋するよう仕向けたのだった。 そこで出会ったのが、マグネスの息子ピエロスである。 夢中になったクレイオは、彼との間にヒュアキントスをもうけたのだった。
このヒュアキントスアポロンに好かれて事故で死んでしまうのである。 (詳しくは愛の神話の章で。)

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ディオニソス編

リュクルゴスペンテウスミニュアスの娘達プロイトステュレニアの海賊エレウテルの娘達

<リュクルゴス>
トラキアの大河ストリュモン河付近に住んでいるエドノス族の王「光を遮る男」リュクルゴスという男がいた。
トラキアの民衆たちの間では、ディオニソスを信仰する者たちが増えてきていたのだが、酒を飲んで亭主や子供をほったらかし狂喜乱舞する 女信徒たちの態度に我慢ならないリュクルゴスは、自ら狩用斧を携えて女信徒たちの元へ出かけていった。 そして彼女たちの持つディオニソス信教の証しである山ニンジンの葉杖を叩き折り、彼女たち自身も殺してしまった。 またディオニソスも侮辱されてトラキアから追放された。
ディオニソスはまだ幼く、自らリュクルゴスを罰する神の能力は持っていなかったため、 ゼウスリュクルゴスを盲目にして、悲惨な最期を遂げさせたのだ。
アポロドロス説では、追い出されたディオニソスはとりあえず海中へ行きテティスの元へ逃れた。 そして仕返しとしてリュクルゴスの気を狂わせ、息子のドリュアスを葡萄の木だと思い込ませる。 リュクルゴスは葡萄の木に見えた息子に斧を撃ち込み、殺してしまったのだった。
ほどなくしてこの地に飢饉が訪れた。信託で「リュクルゴスを殺せば再び実がなるだろう。」と聞いたエドノス族は、 彼をパンガイオン山に連れて行き縛った。そこで彼はディオニソスによって馬で殺された。

幼いディオニソスリュクルゴスの最期が描かれているあたり、信仰がディオニソスに 移り変わる誕生神話なのかもしれません。

<ペンテウス>
カドモスよりボイオティアのテーバイ王国を継承していたペンテウスは、 カドモスの娘アガウエとスパルトイの1人エキオンとの間に生まれた。 つまりディオニソスとは従兄弟にあたるのである。
彼が王位を継承してまもなく、民衆の間ではディオニソスへの崇拝が広まっていた。 いかがわしく狂気な信仰に、秩序を重んじるペンテウスには我慢のならないものであったが、 とうとう母親アガウエもがディオニソス崇拝に染まってしまった。 一説にはアガウエたちが信仰をバカにしたために、神罰で狂ってしまったのだとか。
とにかくペンテウスの憤慨は頂点に達した。狂乱する女信徒達を監禁したのだが、鍵を開けて脱走してしまう。 そしてキタイロンの山へ駆けていったのだ。
この状況を防がねばならぬと女信徒達を追いかけるペンテウス。 しかし狂気に満ちた母アガウエイノたちに捕らえられ、 体を八つ裂きにされて殺されてしまう。息子を野獣だと思い込んでいたアガウエは、転がった首を杖で貫き 戦利品を誇るようにテーバイの町へ凱旋帰国した。
町の者は驚き、老カドモスが急いで館から飛び出て娘達を冷静に戻した。 そしてアガウエは手にした首が息子ペンテウスだったことを悟る。
「息子だと気づかなかったのは私達の罪です。しかし、これはあまりにも酷い罰ではございませんか。」
「神として生まれながら、お前達にさげすまれた私からの神罰だ。」
ディオニソスは冷然と言い放ったのだった。

<ミニュアスの娘達>
ボイオティア地方の古都オルコメノスを統治していたミニュアスには数人の娘達がいた。
やはりその頃、街ではディオニソス信徒の力が強さを増してきていた。 しかしアルキトエレウキッペアルシッペの3人娘は 信徒を馬鹿にして祭りには加わらず、家の中で機を織って楽しんでいた。 ディオニソス自らの誘いも拒んだため、神罰がたちまちくだった。
部屋の中は猛獣だらけ、織っていた織物は蔓に変化し、どこからか笛太鼓の音色が鳴り響く。家は揺れだし、恐れのあまり逃げ出す3人娘は たちまちコウモリに変身して軒下や暗闇の中に逃げて行ってしまったのだった。

<プロイトス>
アルゴス領主アクリシオスの双生児として生まれたプロイトスには、 3人の娘リューシッペイピノエイピアナッサがいた。
アルゴス全土がディオニソス信徒で湧き上がっている中、彼女たちはこの祭礼を受け入れなかった。 そのため気違いになりアルゴス全土をさまよい歩いた。そして子供の肉を引き裂いてくらいついていた。
(これはヘシオドス説で、アクシラオス説ではヘラの木像を軽んじたためとある。)
さらにアルカディアとペロポンネソスを通り過ぎ荒地を歩きさまよった。
事の事態を重く見たプロイトスは、当時有名だったまじない師メランプスを呼ぶ。
彼はアミュタオンエイドメネの息子で、予言者であり、薬と清めによる治療方法の発見者だった。
プロイトスの依頼に対し、メランプスはある条件を出す。
「貴方の主権の3分の1をもらえるなら、娘さんたちの治療を施します。」
プロイトスはそんな莫大な報酬は出せないと断ったが、娘たちはさらにひどくなっていき、おまけに他の女達も気が狂い始めた。 手のつけようがなくなったプロイトスは、仕方なくその条件を飲もうとしたがメランプスはさらに
「私の兄弟のビアスにも自分と同じだけの土地を与えたら治療をする。」
とふっかけた。これ以上の要求に耐えられなかったプロイトスはその条件で治してもらうことにした。
そこでメランプスはたくましい若者をひきつれ、叫び声と神がかりな踊りで女たちを山からシキュオンへ追い立てた。 追跡中に最年長のイピノエは亡くなってしまったが、他のものは皆正常に戻った。
プロイトスは約束通り所有地を分け与え、2人の娘をこの兄弟に妻として与えた。

<テュレニアの海賊>
ディオニソスはナクソスへ渡るためにテュレニア人(エトルスキ族)の海賊船を雇った。 ディオニソスを良家の人間だと勘違いした海賊達は身代金を取るために彼を拘束した。
しかし、いくら縄で結んでも自然に外れてしまうのだ。その様子を見た舵取りは只者ではないと悟り
「こ、この人は神様だ!すぐに陸へ連れ戻せ!さもないと海が荒れ狂うぞ!(´д`;;)ノ」
しかし周りの人間は全く信じようとはせず、ますます沖に船を出し始めた。 仕方がないのでディオニソスはマストと櫂を蛇に変えて、船をツタと笛の音で満たしてしまう。 自身を獅子の姿に変え、甲板に熊を召還した。驚いた海賊達は逃げ惑い、気が狂って海の中へ飛び込んだ。 そしてそのままイルカになったという。
ディオニソスを助けようとした舵取りだけは被害が及ぶことはなかった。

<エレウテルの娘達>
アッティケ村の西方ボイオティアの境にあるエレウテライという地は、キタイロン山の南側にあるブドウ栽培に優れた土地である。 ここの領主エレウテルには数人の娘達がいたが、彼女たちは狂ったように踊り歩くディオニソス信仰を怠ったために 気がふれてしまい、野山をワケもなく走り回るようになってしまった。
困った父エレウテルが信託を求めると、ディオニソスを祭れとのことだったので、急いで彼を崇めて娘達は病が癒えたのだった。