とにかく誕生の章なので、皆さん子供をボロボロ産む産む。
まず「天空」ウラノスと「大地」ガイアは、百手巨人(ヘカトンケイル)のコットス・ブリアレオス・ギュエスと
一眼巨人(キュクロプス)の「雷霆」ブロンテス・「電光」ステロペス・「白熱の光輝」アルゲスを生む。
しかし父ウラノスは彼ら6人を気に入らなかったらしく(かわいくなかったんだろう)なんと地獄のタルタロスへ幽閉してしまった。
完全に父親放棄である。もちろん母ガイアは黙ってみてはいられない。
「私が腹を痛めて産んだ(かどうかは知らんが)子供達になんたる仕打ち!」
夫ウラノスの子供たちに対する態度に怒り、ついに夫暗殺計画を企てる。やはり夫婦は所詮他人なのか。
こと子供のことに関しては母強し。
そして時は満ちた。
後に生まれたティタン族12人「大陸」オケアノス・「川」テテュス・コイオス・「輝き」ポイベ・「上に在るもの」ヒュペリオン・
「光」テイア・「時」クロノス・「地上」レア・イアペトス・「法」テミス・「天の光?」クレイオス・「記憶」ムネモシュネに
アダマースという鉄の斧 (または金剛石ともいわれている)を渡す。
「さあこれでお父さんを切り刻んでちょうだい。あんたたちの兄さんたちのために。」
斧を受け取ったのは、末っ子のクロノスだった。このままでは兄よりも上にあがれないという野望がめらめらと沸き立ったに違いない。
彼はタルタロスに幽閉された6人を開放し、彼らの力を借りて父親ウラノスの殺害に成功した。
アポロドロスは、オケアノス以外のティタン族がウラノスを殺害したと書いてますが、なんにせよ主だったのはクロノスなのでしょう。
そして父にかわり彼が世界を君臨することとなった。しかしそれは束の間の話。
とりあえずクロノスは父ウラノスの体を7つに切り裂いて、証拠隠滅がごとく7つの大洋に投げ捨てた。
7つとはたぶん頭・両腕・両足・体・さぞかし立派な巨根オティンティンであろう。
その立派な巨根を投げ捨てた途端、流れ出る血から「復讐の女神」エリニュスが誕生。
いやあ、男としてのプライドか、最後まで粘るこのド根性。ちなみにこれはアポロドロスの説。
エリニュスの名は「止まない女」アレクト・「殺戮を復讐する女」ティシポネ・「妬む女」メガイラ。
その姿は真鍮の翼と爪を持ち、髪には無数の蛇が巻きつき黒い衣を身に纏う。そして手には炬火かムチを携える。
そして罪人をしつこく追跡して苦しめ、あらゆる種類の呵責を与えるのだ。根本的には、復讐の追求ではなく正義と秩序の守り神である。
なぜなら、彼女たちは血縁者の殺人に対して執拗に追い求めるからだ。ゼウスも彼女たちにたやすく掣肘(せいちゅう)をくわえることはできないのだ。
他にもヘシオドスは輝く鎧に長槍を持った巨人の「楡(にれ)の木」の精霊メリアイも生まれたと記述している。
またティムポの周りに泡がぶくぶく出てきて、そこからアフロディテが生まれたという説もあるが、
そうなるとアフロディテの母親ディオネの存在を否定することになる。
「泡」という意味のアプロスからきているようだが、アフロディテ女神は元々キプロスで発祥した土着女神で、
ギリシアの神話に混じってアフロディテの立場が決まったらしい。
アポロドロスはディオネもガイアとウラノスの子と表記している。
ま、ここらへん曖昧ですね。
そんな娘達を産み残していくウラノスであったが、彼の復讐はこれだけでは終らない。彼はクロノスに
「お前の息子が同じ事をお前に成すであろう。」
というなんともわくわくする予言を残して死んでいくのだった。
とりあえずクロノスは姉のレアと結婚し、世界を統治する立場となった。神様は近親相姦なんてあたりまえです。
ごちゃごちゃ言わない。めでたくレアは妊娠したのだが、クロノスは父の遺言が忘れられない。
毎日怯えて暮らすのもイヤになった彼は素晴らしいことを思いついたのだ。
生まれた子供は食ってまえ。
次々と生まれてくる子供達を丸呑みしていくお父さん。さすがに噛むのは気がひけたか。ちなみに飲まれた子供は以下の5人。
「かまどの女神」ヘスティア・「農業の女神」デメテル・「愛・結婚」ヘラ・「死者の神・富める者」ハデス・「海の神」ポセイドン。
もちろんレアは黙ってみてはいられない。
しかし彼女は母ガイアと違いおとなしい性格だったようで、夫殺しに手を染めることはせず、かわいい我が子を隠す手段に出たのだった。
6人目の子供だけはばれぬようにクレタ島ディクテー山のアイガイオンの洞窟で無事生んで、
クロノスには子供に見せかけた石を飲み込ませた。てゆーか、父上なんで気づかん?
まあとにかく助かった6人目の子供がこの物語の主人公「天上・全知全能の神」ゼウスなんである。
ゼウスはクレタ島でニンフのメリッサ(王メリッセウス?との記述もあり)とその娘のアドラステイアやイデに育ててもらい、
牝山羊アマルテイアの乳を飲み育った。ニンフとは半精霊とでも解釈すれば、当たらずとも遠からず。たぶん。
彼女たちは蜜を集めゼウスに飲ませた。ゼウスはいたくこれを気に入り、後にネクタル(神様の飲み物)にも蜜を入れて飲むようになる。
また精霊クレス達は武装してゼウスを守り、クロノスに泣き声が届かないように槍で盾を打ち鳴らし続けた。
そのかいあって一人前になったゼウスは姉兄を助けるべく、オケアノスの娘である「知恵」メティスの協力を得て、
クロノスに「飲み込んだ者を吐き出す薬」を飲ました。
そして石につまづかせて、まず最初にゼウスの身代わりの石を吐き、続いて5人の兄姉たちを吐き出させた。もちろん五体満足。
ゼウスは自分の身代わりの石を記念して、パルナッソス山の麓ピュト(のちのデルポイ)に置き、万人の見せしめとした。
そしてクロノス達ティタン族とゼウス兄姉の戦いが10年間続くのである。
10年間の親子喧嘩は壮絶なものだった。山は燃え、大地は裂け、海は荒れ狂う。
ゼウスたちはオリュンポス山に立てこもり、ティタン族はオトリュス山にこもった。
とうとう見かねたガイアは、百手巨人と一眼巨人に対するクロノスの態度への恨みから孫のゼウスたちに
彼らを味方に引き入れることを提案する。どうやらガイアは最初の子供達が一番のお気に入りらしい。
ゼウスはタルタロスの番人カンペ(何者だ?)を殺し、幽閉されている彼らを救い出した。
百手巨人は岩を持ち上げティタン族を組み伏し、一眼巨人は強力な武器を作った。
ゼウスには雷光、ハデスにはアイドス・キュネエ(姿が消える帽子)、ポセイドンには三叉の戟を与え参戦した。
結果ゼウスたちの勝利に終わり、ティタン族をタルタロスに幽閉し百手巨人に牢番をさせた。
こうしてティタン族は永久にタルタロスから脱走することができなくなってしまう。そしてゼウスの時代が始まるのである。
・・・が、あと2回別の巨人族と戦う羽目になるのだった。
それまでに人間が生まれたりするのだが、ゼウスが完全に統治できるようになるまで、それはまた後ほど。
さて、ここでゼウスを育てた牝山羊アマルテイアとメリッサ達はどうなったのか。
まずアマルテイアはゼウスに3つの名誉を与えられた。1つ目は、彼女の死後ゼウスは皮を自分の盾に張るのに用いた。
これは後にアテナの「神盾」アイギスとなる。
2つ目は彼女の角をヘスペリデスの園から取った黄金の果実で満たし、食べると元通りに満ちる「豊穣の角」コルヌコピアとなった。
3つ目は星座になり、今は山羊座として夜空に輝いている。
実はメリッサ達はゼウスを助けた事がクロノスにばれてミミズにされてしまうが、
ゼウスが蜜を与えてくれた礼にと立派な女王蜂に変え、密に関わる仕事を与えたのだった。
クレス達は知らね。ま、あとでヘラの陰謀に手を貸したため殺されちゃうんですけどね。
(詳しくはゼウスの愛人の章で。)
ちょっとここらへんで、ティタン族家系の紹介をしとこう。
オケアノスは世界を取り巻く大河・大洋の神格化である。
テテュスを妻とし、3千人もの河々の神である息子、そして3千人の娘オケアニデスを生む。
息子はイナコス(アルゴス地方の河)、ネイロス(ナイル河)、
アルペイオス(オリュンポス近くの河)、エリダノス(ガリア地方の河?)、
ストリュモン(トラキア地方の河)、スカマンドロス(トロイア地方の河)、
ケルコペス、アソポスなど。
娘のオケアニデスは代表者を表にする。
名前 | ドリス | エレクトラ | クリュメネ | アシアー | メティス |
夫 | ネレウス | タウマス | イアペトス | イアペトス | ゼウス |
備考 | 海の女神 | − | − | − | − |
名前 | ステュクス | エイデュイア | エウリュノメ | カリロエ | プレイオネ |
夫 | パラス | − | ゼウス | クリュサオル | アトラス |
備考 | 黄泉の女神 | − | − | − | − |
名前 | メリア | メリボイア | クリュティエ | レウコトエ | ロデ |
夫 | − | − | − | − | − |
備考 | − | − | ひまわり | − | − |
最後の3人にいたってはネレイデス(ネレウスの娘達)との説もあり。も〜わからん。どっちにしろ3千人もいるのだ。同姓同名ぐらいざらにいるだろう。
コイオスは「輝き?」ポイベとの間に「星空」アステリアとレトをもうける。
アステリアはゼウスの求愛を拒否するが、レトは彼との間にアポロンとアルテミスを生む。
「高きを行く者」ヒュペリオンは「神々しい女」テイアとの間に、「太陽神」ヘリオスと「月の女神」セレネ、「曙の女神」エオスをもうける。
クレイオスは「広い力」エウリュビア(ポントスの娘)を娶り、
「星座」アストライオス(「曙の女神」エオスの夫)、
パラス(ステュクスの夫)、
ペルセース(「星空」アステリアの夫)の3人の息子をもうけた。
次にイアペトスは、オケアニデスのクリュメネあるいはアシアー(一説では「法」テミス) を妻とし、
「蒼穹の支柱の番人」アトラス、「先に考える者」プロメテウス、「後で考える者」エピメテウス、
そしてゼウスの雷に撃たれタルタロスにぶち込まれた一番訳のわからない存在であるメノイティオスをもうけた。
「法の女神」テミスはゼウスとの間に3人の「季節の女神」ホーライすなわち「平和」エイレネ、「秩序」エウノミア、「正義」ディケと、
3人の「運命の女神」モイライすなわち「糸を紡ぐ役」クロト、「糸を計る役」ラケシス、「糸を切る役」アトロポスを生む。
「記憶」ムネモシュネもゼウスとの間に9人の「芸術の女神」ミューズを生む。
名前は「叙事詩」カリオペ、「歴史」クレイオ、「悲劇」メルポメネ、「抒情詩」エウテルペ、「恋の詩」エラト、
「合唱舞踊」テルプシコレ、「天文・占星」ウラニア、「喜劇」タレイア、「聖歌・幾何学」ポリュヒュムニア。
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